少子化や共働き家庭の増加、情報過多の時代。子育てを取り巻く環境は、大きな転換期を迎えています。時代の変化が早すぎて、よかれと思って自分の親にしてもらった通りにほめたり叱ったりしても通用しません。今の時代、親としてどのように子どもと向き合い、どんな力を育んでいけばよいのでしょうか。「これからの時代の子育て」において、大切にしたい視点とは何か。あらためて考える時が来ています。
本トークライブでは、「家庭で賢く育てる」主宰の苅部世詩絵さんと、「賢母の食卓」主宰の表洋子さんをお迎えし、日々の暮らしや家庭でのかかわり方、そして食や学びを通じた子どもとの向き合い方について語っていただきました。
(トークライブは2025年4月16日にオンラインで開催しました)
<登壇者>
苅部 世詩絵 氏 家庭で賢く育てる主宰
表 洋子 氏  賢母の食卓主宰
<モデレーター>
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員 庄子寛之

お二人の自己紹介

庄子:まずは自己紹介をお願いします。

苅部: 苅部世詩絵と申します。元塾講師で中高の国語教員の免許を持っています。 『ひとりで書ける!読書感想文大全』という本も出版しました。 賢く育てたいママ向けのオンラインコミュニティを運営しており、6周年で200名以上が在籍しています。プライベートでは、二人の中学生の息子がおります。偏差値30台だった長男を、大阪で一番賢い進学校に合格させました。偏差値の数字的に難しい子を賢く育てることに、強い興味を持って活動しています。

表:表洋子と申します。東京の大手進学塾内の会員制カフェテリアにて、食育担当として延べ1万人の受験生を食事面からサポートした経験をもとに、保護者が家庭の食事で子どもの成長や受験をサポートするための「受験に合格する料理教室」を主催しています。感染症に負けない強い体づくりや、子どもの成長を底上げし、いざという時に頑張れる力を発揮できる食事サポートを得意としています。現在小学2年生の娘がいます。

 

親子の対話が子どもの成長を支える

庄子「苅部さん、これからの時代の子育てで特に大切だと思うことは何でしょうか?

苅部:私は、親子の対話がとても大切だと思っています。今の時代、大学入試でも推薦枠が増え、自分をアピールする力や志望校が求める人物像を理解する力も求められています。そのためには、家庭内での対話が土台になります。例えば、子どもが学校で嫌なことがあったと話したとき、『どうしてそう思ったの?』と問いかけることで、子どもは自分の考えを整理し、外部に向けて発信する力を養うことができます。

庄子:なるほど。親が子どもの話を聞く姿勢を持つことが大切なんですね。

苅部:そうですね。つい親は『それは、あなたが悪いんじゃないの?』と言いたくなることもありますが、まずは『そう思ったんだね』と受け止めることが大事です。それが子どもの自己肯定感を育む第一歩になります。

体づくりの重要性と食事の役割

庄子:表さん、これからの時代の子育てで大切だと思うことは何でしょうか?

表:私は、子どもの体づくりがとても重要だと考えています。最近、保育士さんや塾の先生方から『10年前の子どもと比べて体力がない』という声をよく聞きます。特にコロナ禍以前から体力低下が顕著で、運動不足や生活習慣の変化が原因と考えられます。

庄子:確かに、外遊びの機会が減っていると感じますね。食事の面ではどうでしょうか?

表:食事も非常に重要です。私たちの体や脳は、食べたものでできています。特に成長期の子どもは、食事の影響をストレートに受けます。例えば、勉強前にはブドウ糖を含む食品とビタミンB1を組み合わせた食事を摂ることで、集中力を高めることができます。おにぎりに肉味噌を入れるなど、簡単で効果的な工夫を取り入れると良いですね。

親子で楽しむ食卓の工夫

庄子:忙しい中で、親が食事を準備するのは大変ですよね。表さん、何か工夫はありますか?

表:忙しいときこそ、子どもを台所に巻き込むことをおすすめします。例えば、野菜を洗うなど簡単な作業でも構いません。一緒に料理をすることで、親子のコミュニケーションが生まれますし、子どもが自分で作ったものを食べることで、食べ物への興味も深まります。

庄子:なるほど。親子で一緒に料理をすることで、食事の時間が楽しくなりそうですね。

表:そうですね。また、味噌玉やお椀で作る味噌汁など、簡単に作れるアイデアもあります。味噌玉は、味噌に乾燥わかめやかつお節を混ぜて丸めておくだけで、ポットのお湯を注ぐだけで味噌汁が作れます。忙しいときでも手軽に栄養を摂れるのでおすすめです。

書く力を育むための工夫

庄子:苅部さん、作文が苦手な子どもにはどのようにアプローチすれば良いでしょうか?

苅部:作文が苦手な子どもには、まず語彙力を増やすことが重要です。例えば、「楽しかった」以外の表現を子どもに挙げさせることで、言葉の選択肢を広げることができます。また、自分の好きなことについて語る経験を積むことで、自己表現の力を養うことができます。

庄子:親がどのように関われば良いでしょうか?

苅部:「親が自分の好きなことを子どもに話すことも効果的です。例えば、私は阪神タイガースの佐藤輝明選手が好きなのですが、その話を子どもにすると、『僕はエラーしない選手の方が好きだな』と意見を言ってくれるようになります。親が自分のことを話すことで、子どもも自然と対話に参加しやすくなります。

子育てにおける情報のアップデート

庄子:親が情報をアップデートすることの重要性について、お二人はどうお考えですか?

表:親自身が日々学び続ける姿勢が大切だと思います。例えば、食事や学びに関する最新の知識を取り入れることで、子どもにとってより良い環境を提供できます。

苅部:そうですね。例えば、漫画も子どもの学力向上に役立ちます。文部科学省の調査では、漫画が家にたくさんある家庭ほど子どもの学力が高いというデータがあります。漫画を通じて子どもと『対話』することで、学びのきっかけを作ることができます。

これからの子育てに必要なこと=「家庭内での対話」「楽しい食卓」

庄子:本日は、親子の対話、体づくり、そして柔軟な学びの環境についてお話を伺いました。お二人から最後に一言ずつお願いします。

苅部:親子の対話を大切にしてほしいと思います。子どもが自分の意見を持ち、表現する力を育むためには、家庭内での対話が欠かせません。ぜひ、子どもの話を『聴く』時間を作ってみてください。

表:食事を通じて、子どもの体づくりや親子のコミュニケーションを深めてほしいと思います。忙しい中でも、簡単な工夫で楽しい食卓を作ることができますので、ぜひ試してみてください。

庄子:ありがとうございました。これからの子育てを考える上で、今日のお話が皆さんの参考になれば幸いです。

【お二人の主な著書】

※苅部世詩絵著『ひとりで書ける!読書感想文大全』(2023新興出版社)

※表洋子著『中学受験は食事が9割』(2024光文社)

 

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